「と、知盛、強く噛み過ぎ!」
組み敷いた少女から小さな悲鳴が上がる。
だが知盛はそれを無視して強く首筋に歯を当てた。
接吻をする、というより、噛む、という行為に近い乱暴な口づけだ。
ぐっと歯が皮膚を突き破るのを感じた。
とたんに口の中に鉄の味が広がる。
「痛っ! ちょっと、やめてよ」
少女の腕が伸びてくる。
それをあっさりと止めると、知盛は首筋から滲み出た血をぺろりと舐めた。
「甘い」
思わず感嘆の溜息が零れる。
甘いはずなどないのに、甘く感じてしまう。
唇も頬も肌も血もすべて甘い。砂糖菓子のように。
甘いものはあまり好きではない。
だが、とろけるような望美の甘さは別物だ。
「明日は学校があるから首にキスはしないで、って言ったでしょ?」
頬を膨らませる望美に、
「行かなければいい」
「どうして知盛は自分勝手なの」
「さあな。だが、あえていうなら、俺を焦らしたお前に責任があるとだけ言おう。
俺はお前のすべてがほしいのに、お前はそれに応えてくれない。
こんなに飢えているのにどうして無視をする?」
「む、無視って……。あぁんっ!」
乱暴に望美の胸を揉みしだいてゆく。
白いベッドに望美の長い髪が波打つように揺れた。
「散々俺を焦らしまくったんだ。覚悟はできているよな?」
「覚悟なんて……んんっ」
最後まで言い終わらないうちに望美の唇に、先ほどの首の噛んだ跡に知盛は口づけを落としたのだった。