「挿入れますよ」
惟盛はしどけなく伸ばされた足を元のように立てる。ジッパーをおろすと、蜜壺に自身をあてがった。
「ひっ……あぁぁあぁん!」
望美は一際大きく艶やかに啼いた。
自身を最後まで蜜壺に埋め込むと、惟盛はゆっくりと動きだした。
「あぁぁんっ……んぁ」
望美の密壺は惟盛を歓ぶかのようにぎゅっと締めつける。
数度突き上げ惟盛は自身を引き抜くと、変わりにまた指を挿入れた。
入り口を弄られる。
時々奥まで挿入るが、なかなか望美のしてほしいところを触ってくれない。
蜜壺に挿入れている指を動かすたびにくちゅくちゅと淫らな音が聞こえる。
望美を蕩けさせるように惟盛は性器をくまなく愛撫する。
もう一度、惟盛の自身を挿入れてほしい。
惟盛はお仕置きだと言った。
このまま焦らして焦らして焦らされまくるのだろうか。
イくことを考えると身体が疼きだす。
早くこの身体をどうにかしてほしい。
「ねぇ、惟盛」
望美は蜜壺を弄ぶ惟盛の腕を掴んだ。
「どうしました、望美」
望美がしてほしいことを知っているくせに、惟盛はわざと聞いている。
「じ、焦らさないでよ」
望美は懇願した。
惟盛は至極あっさりと言った。
「わかりました。もう焦らすのはやめてあげましょう。で、何をご所望しますか?」
蜜壺からずるりと指を抜かれる。
「あんっ」
また空洞になってしまったのがもどかしくて、望美は息を漏らした。
「何かって……見たらわかるでしょう?」
こんなにわたしが求めているのに。
「こういうことですか?」
さわりと性器を撫でられる、芽を花びらをゆっくりと。
「あぅ……ち、違う」
「では」
「あ、あぁん…」
こりっと硬くなった胸の先端を摘まれる。
痺れるような甘い快感が流れてくる。
思いっきり貫いてほしい、めちゃくちゃにしてほしいという感情が生まれ、望美はそれに支配されそうになる。
もう、惟盛しか考えられない。
「そ、そこじゃない」
「どこですか? 口で言いなさい」
胸の先端をこねるように惟盛は指先で弄んだ。
「い、言えないよ」
自分が惟盛に欲情しているようで。
恥ずかしいし、絶対にできない。
惟盛は挑発するように自身を望美の性器に触れさせた。
「あんっ!」
ほしい、どうしてもほしい。
惟盛で満たされたい。
芽を惟盛自身に擦られ、じれったさに望美は喘いだ。
挿入れてほしさに気が狂いそうになる。
「望美」
惟盛は望美の半開きになった唇にキスをする。
「言えば挿入れてあげましょう」
耳元で囁かれる。
「い、いや」
まだ残っている理性を精一杯保ってみせた。
入り口に惟盛が自身を含ませ軽く動かす。
望美が感じたのも束の間、すぐにそれは蜜壺から離れてゆく。物足りないというように蜜壺が伸縮する。
「はっ、あん」
切なげに望美が吐息を零す。
「だから言えばいいのです」
もう、仕方がない。これ以上放置されるのは辛すぎる。
「な、何を言ったらいいの?」
耳元で囁いた惟盛の言葉にそれは無理だと、望美は思った。
だが、言わなければずっと快感の火種が身体の中に燻ぶったままだ。
ふっと熟れた胸の先端に息を吹きかけられた。
上気した唇から、甘い吐息が零れ落ちる。
「い、いれてください」
小さな声で望美はふりしぼるように言った。
望美が惟盛に丁寧な物言いをするのはこれが初めてではないだろうか。
惟盛は満足したように舌なめずりをした。
「何をですか?」
意地悪、と言いたいところだが、何を? の部分を望美が省いてしまったのだから仕方がない。
「惟盛の……あれ……を」
恥ずかしすぎて身体が燃えるように熱い。
「まあ、よいでしょう」
惟盛は望美の頭を優しく撫でた。
ふと動きを止めると、
「言い忘れていました」
この期に及んでそれはないだろう。
限界に近い望美は思わず惟盛を睨みつける。
「これからはちゃんと傘を持ってゆく、天気予報を確認する、と誓いますか?」
「うん、約束する。ねぇ、早く」
破ったらどうなるか、なんて聞いている余裕はなかった。
望美は誘うように腰を揺らした。
「あっ…あぁぁん……あぁ!」
密壺いっぱいに惟盛を埋め込まれ、望美は歓喜する。自ら腰を動かし、惟盛をもっと感じようとした。
合わせるように、惟盛も望美を穿つ。
くちゅり、くちゅり。淫らな水音が結合部から聞こえる。
望美の敏感なところを惟盛は何度も擦り上げた。
望美が身をよじらせる度、桃色の髪がいやらしく乱れ、顔に肩にかかる。
「はっ、あん……こ、惟盛……」
望美は求めるように惟盛にしがみついた。
顔に張り付いた髪の毛を払いのけると、惟盛は深く深く望美を穿った。
奥まで惟盛を感じ、望美は全身を震わせる。甘く蕩けるような痺れが何度もやってくる。
「こ、惟盛。もう、だめ」
望美が絶頂を訴える。
密壺から自信を引き抜くと、惟盛は望美の敏感なところを強く擦り上げた。
「やっあぁぁぁぁぁん!」
身体を弓なりに反らせると、望美は四肢を震わせ快楽の海へ堕ちたのだった。
*****
「気がつきましたか?」
望美が目を開くと惟盛が心配そうに見下ろしていた。
「うん、大丈夫」
重い身体を起こし、惟盛と同じようにベッドの端に望美は座った。
「今から、夕飯の用意しなくちゃ」
望美は思い出したように呟いた。
「私がやりますよ。確か、まだ何か残っていましたよね?」
惟盛の問いに望美は曖昧に返事をする。
冷蔵庫にあるのは失敗した卵焼きと、丸焦げになった肉と、茹ですぎたスパゲティだと記憶している。これはすべて望美が作ったものだ。
そう告げると惟盛は、まあ、食べれないことはないでしょう、と苦笑した。
惟盛は望美のあまり上手くない料理をもう何度も食べている。よく腹を壊さないものだと望美は関心する。
きっと京の人は胃が強いんだろうと勝手に想像しているが、実際のところはどうなのであろう。だが、望美は惟盛に聞かない。
不味ければ不味いと言うだろうし、それがないのなら許容範囲ということだろう。
雨はどうなったんだろうと思い、耳を澄ませた。
さっきまで激しかった雨風の音は聞こえない。だいぶ穏やかになったのだろう。
変わりように、あの激しさは何だったの? と思わず雨に問いたくなる。
惟盛も雨もわがままだなあ。
望美は心の中で苦笑いした。
やりたいなら、そう告げればいいのに。
お仕置きなんて惟盛の柄じゃない、と思う。
散々焦らされたし、恥ずかしいことも言わされたけど。
優しかったし、何よりも心地よかったし。
これくらいなら、許容範囲かな。
あ、でもいつもいつもは嫌だから。忘れないようにしなきゃ。
「買い物袋に入っていたお菓子どうした?」
「菓子……? あぁ、テーブルの上に置きましたよ。望美が甘いものを買ってくるなんて珍しいですね。てっきり甘菓子は嫌いだと思ってました」
「そ、それは……」
ダイエットしていたからとは言えない。
「女は甘いものが好きといいますが、望美もそうなのですね」
惟盛は一人納得したように頷いた。
「好きだけど、食べないの」
「はい?」
つい、口に出してしまった。
「ほら、わたしって太ってるでしょう?」
肉がおなかについている、望美は自分の腹を触った。
「あ、いたっ!」
いきなり腹の肉を摘まれた。
「なにするの!」
口を尖らせれば、
「それ贅肉とは言わないでしょう。むしろちょうどいいのでは?」
大好きな人から褒められ望美は顔がほころびそうになったが、慌てて引き締める。
これで気を抜いたら、おデブ道まっしぐらになってしまう。
「と、とにかくお菓子は惟盛が食べていいから!」
「運動した後ならさほど問題はないのでは?」
運動=先ほどの行為だとわかり、望美は顔を赤くする。
動いた後は甘いものが食べたくなるし、一口ぐらいなら……。
「ダメダメ」
望美は甘い誘惑をはねのけるように頭をふった。
「そうですか」
あまりにも残念そうに惟盛が呟いたので、ぐらりと望美の決意が傾いだ。
「望美が甘いものを食べて喜ぶ姿が見たいと思ったのですが……さぞかし可愛らしいのでしょうね」
惟盛は独りごちるように言った。
どうやら惟盛の頭の中では、女は甘いものが好き、という図式が出来上がっているようだ。
だいたいの女に当てはまることなので、これについてはとやかく言わないでおこう。
まあ、自分ひとりで食べるわけではないのだし。
望美の決意は傾いだまま崩れ落ちる。
「じゃあ、惟盛。半分ずつ食べようか」
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