キスをする瞬間
何度か口付けを交わした後、望美は問うた。
「ねぇ、惟盛」
「なんですか」
「どうして目を開けてキスするの? 閉じてしてよ」
「どうしてって……難しい質問ですね。あえて言うのなら、あなたの表情味わいたいからでしょうか。望美、あなたも目を開けてキスをしてご覧なさい。そうすれば私の言っている意味が解るでしょう」
「わたしはできない……だって、だって恥ずかしいから」
「今更、何を言うんですか」
惟盛は呆れつつ、望美のブラウスのボタンを外し始めた。
あらわになった胸をゆっくりと揉みしだく。
その度に望美は甘い吐息を漏らす。
ふわりと口付けをされた。
薄目で惟盛を見たら、しっかりと彼は目を開けていた。
行為の最中なら仕方がないが、キスの時に感じている自分を見てほしくない。
かあっと恥ずかしくなり、望美は惟盛を押した。
惟盛が驚いたように瞠目する。
「目を閉じてって、言ってるでしょ?」
抗議をしたのに、惟盛は答えない。
その代わりもう一度口付けを落としてくる。
反射的に望美は目を閉じた。
どうせ言っても聞き入れてくれないのだ。
それならば見つめてやろう。
惟盛がキスしづらくなるように。
穴が開くほど彼を見つめるのだ。
恐る恐る望美は目を開けた。
「んんっ、あっ」
舌を絡められ、吐息が漏れる。
と、その刹那。
惟盛と目が合った。
恥ずかしい、と思ったけれど、わたしだってやればできるんだからね! という気持ちのほうが強かった。
だから我慢して、見つめたまま唇を重ねあった。
互いの視線を感じながらのキスはいつもより、いやらしく感じた。
頻繁にするのは嫌だけどたまにならしてもいい。
「ふふっ、望美に見つめられながら、口付けをするのも新鮮ですね」
「馬鹿、調子に乗らないでよ」
望美は惟盛の頬を軽く抓った。
―END―
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