月沈むのを待つ二人



「さ、夜空のほうはどうなってるかな」

 ヒノエは空を仰いだ。

 望美もそれに続く。

 そして―――。

「綺麗……」

 溜息しかでないというのはこのことだろう。

 漆黒の空に浮かぶ乳白色の光の帯。

 星々はまるで粉砂糖のように白くそしてきらきらと輝いていた。

 夜空に浮かぶ幻想的な風景に望美が声もなく見つめていると、



「見事な天の川だね。これだったら、彦星と織姫(たなばたひめ)も逢瀬できるだろう。いや、もうしてるかもね。オレたちみたいに」


「ヒノエくん、今日が晴れるように祈ってくれたんでしょう?」

「あぁ。お前の喜ぶ姿が見たかったからね。普段は忙しくてお前の傍にいれないからさ」

「ヒノエくんの祈りのおかげだよ。こんなに綺麗な天の川を見れたのは、本当にありがと」

 心の底から嬉しい。

 望美は笑顔で言った。

「今日で一番可愛い笑顔だったよ。ホント、サイコーだね!」

 ヒノエも目を細めた。

「じゃあ、大将! この辺を回りましょうか?」

 威勢よく部下が聞く。

「あぁ、頼む。望美、今日は月が沈むまで、海上を楽しもうぜ!」

 部下が家事きりに専念したのを確認すると、ヒノエはそっと望美を抱き寄せた。

「ヒノエくん? もし誰かが見ていたら……」

 危惧する望美の髪を優しく撫でると、

「誰も見てないって」

 ヒノエは悪戯っぽく瞳を閉じた。

「愛してるぜ」

 耳元で囁かれた、と思った瞬間、口づけられた。

久しぶりの口づけは磯の香がした。



 END





メッチャ短くてすみません。
黒鳥の架け橋」の後半をこのお題に当てたので短くなってます。
いろいろと楽しめて書けたお話でした☆








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