この空の下の何処かで、
君は笑っていてくれているのだろうか




「どうしてるかな、あの人」

 空を仰ぎながら花梨は呟いた。

 晴れた空の青が目に痛い、と思った。

 花梨が京という異世界に召喚されて、戻ってきてからもう一ヶ月が経つ。

 憧れていた翡翠に、想いを告げることなく帰ってきてしまった。

 チャンスはいくらでもあったはずだ。

 当たって砕けろ、と自分を叱咤したこともある。

 だが、ダメだった。

 花梨は翡翠に話せなかった。

 断られたらどうしょうと、自分のような小娘なんか相手にしてくれない(恋人として)という気持ちが強すぎたのだ。

(翡翠さん、元気だったらいいな)

 船に乗り豪快に笑う翡翠の顔が目に浮かんだ。





―END―

お題元:追憶の苑 
「長めの100題 その一 Type : 4」より

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