私の心は澱んでいる、
まるで流れる事を忘れた川のように



 知盛が壇ノ浦に入水した。

 解っていた運命。

 それなのに、どうしてこんなにも心が重いのだろう。

 気がつくと彼のことばかり考えてしまう。

 わたしと舞ってくれたこと、入水する前に剣を合わせたこと……。

 全てが昨日のことのように鮮明に記憶に残っている。


 
 恋をしている、のだろうか。

 知盛に。

 知盛を想う気持ちは日増しに強くなってゆく。

 まるで流れることを忘れてしまった川のように。

 想いが心に溜まってゆく。



 次の運命を上書きすれば、知盛を変えることができるかもしれない。

 わたしは白龍からもらった逆鱗を握り締めた。






―END―

お題元:追憶の苑 
「長めの100題 その一 Type : 4」より

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