ひらひらと風に流されながら飛ぶ蝶が、
酷く哀しげに見えた




「またこの結果になるなんて……」

 わたしは惟盛が消えた後を呆然と見つめた。

 今度こそは惟盛を救いたかった

 だから、必死で説得した。

 怨霊をこれ以上作らないで、と。

 だが、彼は鼻で哂うばかりだった。

「怨霊こそこの世にふさわしいものはいないでしょう」

 説得をあきらめ、わたしは惟盛を封印するしかなかった。

 こうしないと、時は動かないから。

 次の運命は救いたい。

 惟盛が好きだ。

 彼を想う気持ちは薄れず、運命を重ねるごとに深くなってゆく。



 いつ飛んできたのか、蝶が惟盛の消えた辺りを舞っている。

 金粉が羽を動かすたびに零れ落ちる。

 なんだかそれが酷く哀しくて。

 わたしは暗い気持ちを振り払うように、

「ねぇ、惟盛」

 彼が残していった梅と桜の簪を握り締める。

 そして今は亡き惟盛に語りかけた。

「次は変えて見せるから」






―END―

お題元:追憶の苑 
「長めの100題 その一 Type : 4」より


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